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税務経営情報 vol.316

緻  密

初めに断っておきますが、私が美術に興味があるとか文化芸能をよく知っているとかは一切ありません。ただちょっとしたことで大阪の国立国際美術館に足を運ぶことになりました。そのちょっとしたこととは・・・。

子どもの頃のアニメで『バビル二世』というのがありました。そのアニメの曲の冒頭に♪~砂の嵐に隠されたバベルの塔に住んでいる超能力少年バビル二世~♪というのがありました。私の中では結構好きなアニメで、神秘なバベルの塔・超能力というキーワードが子ども心を刺激する言葉であったためかよく見ていました。その頃、友達と言い争ったことを思い出しました。何かというと、歌詞の中にでてくる「バベルの塔」が「バビルの塔」と私が勘違いしていたことです。「バビルの塔」に住んでいるからバビル二世だと思っていたからです。実際は「バベルの塔」が正しかったのですが、何故かそのことを思い出しました。

前置きが長くなりましたが、大阪の国立美術館で「バベルの塔」展が行われていたので、ある金曜日仕事を早めに切り上げて、電車に乗って行ってきました。「バベルの塔」展のサブタイトルとして、「16世紀ネーデルランドの至宝-ボスを超えて-」「一生に一度は見たい名画、ついに大阪へ!」とありました。私の中では、「16世紀ネーデルランド!」や「ボス!」という言葉の意味がよく分からないですが、とにかく「バベルの塔」と「一生に一度は見たい名画」という言葉に惹かれて、やってきました。

展示会の構成としては、16世紀のネーデルランド(今のオランダ当たりのことを指すそうです)で、絵画の巨匠ヒエロニムス・ボスの独創的な画風に影響を受けたピーテル・ブリューゲル1世が描いた「バベルの塔」を見せるというものでした。

自分から進んで美術館に行くのは、子どもと一緒に行った恐竜博物館だとか、旅行先にある美術館に行くぐらいでちゃんとした美術館に行くのは初めてでした(動機は不純ですが)仕事帰りなのでもちろんスーツを着ていたのですが、いつもは仕事帰りというと、居酒屋しかなかったのに美術館というのがちょっと今までにない行動パターンだったので、刺激的でした(笑)そして美術館に行って、「バベルの塔」という言葉しか知らないため他の基礎的知識が皆無だったので、音声ガイドというのがあったのでそれを借りて美術館を回りました。そういうものの手助けを借りながら、絵画や版画を見て回ると素人でも分かりやすくなっていました。ボスが描いていたものは、奇想天外な怪物たちがはびこる世界でした。

16世紀というと日本では、室町・戦国時代で、その頃に絵画と言えば人物像であるとか風景画というのが一般的だったはずです。(詳しくは知りませんが)… そんな中、頭の中で考えた空想の世界を絵にしたことはすごいなぁと思いました。そしてその影響を受けたブリューゲルも、空想の世界を描いていました。

この美術展のメインであるブリューゲルの「バベルの塔」の絵画の前には、実物を見ようと長い列になって並んでいました。私もどうせ
なら実物を間近でみようと並びました。ブリューゲルは旧約聖書に登場する「バベルの塔」の物語を壮大なスケールの構図と細部の緻密な描写で表現しました。というのは実物を見る前に、絵のパーツの拡大図(300%)が掲げてあり、こんな細かいことまで描いていたのかと更に驚きました。空想の世界であるバベルの塔を建てるのにかかる時間を表すために、塔の上の方はレンガが新しいため下に比べて色が鮮やかであったり、窓の形が上部に行くほど新しい様式で作られていたりと時間的経過を表していました。またその時代のものを建てる建築技術を示したり、塔の左側レンガを地面から上に運ぶところだけレンガの粉が落ちて色が変わっているのを表していました。そういう情報を得て実物を見ると「一生に一度は見てみたい」というのが分かりました。空想の世界であるにもかかわらずこれだけ細部にわたって緻密に描くブリューゲルの絵に感動をしました。

もともとどうでもいいような動機でしたが、芸術を楽しむ秋としては良かったのかと思いました。

( 岡 本 清 臣 )

健康マネジメント論 その7<ストレス:前編>

先日、大学生に「ストレスは快も不快もあるけど、不快になる割合が高いストレスは?」と聞いてみたら「人間関係」が数多く上がりました。中には「家族といること&家にいること」。この学生がそのうち家出するのではないだろうか、と少し気にかけています。

「ストレス」とは何か
実は、日常的に「ストレス」という用語がこれだけ頻繁に使われているにも関わらず、学問的には確立された定義は、実はありません。
個人にとって負担となる刺激や要請をストレス要因(あるいはストレッサー)と呼び、ストレス要因によって引き起こされた精神症状、身体症状、行動面の変化をストレス反応と呼びます。この両者を明確に区別はせず、両者を含めてストレスと総称しているのが現状です。そもそも「ストレス」という言葉は、物理学分野での概念でした。それを生物、医学の分野で初めて用いたのはCannon(キャノン:1914年)でした。

ストレスが関与する病気とは?

ストレスが関与する病気をストレス関連疾患と呼びますが、そのうち身体に出てくるものを心身症、精神にでれば精神疾患となります。その人がストレスによってどの病気になるかは、実は遺伝子によって規定された個人の素質によると考えられています。
ちなみに、心身症として診断されることがある病気の一覧は以下です。

呼吸器系 気管支喘息、過換気症候群
循環器系 高血圧症、虚血性心疾患、不整脈など
消化器系 胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群など
内分泌・代謝系 神経性食欲不振症、過食症、甲状腺機能亢進症など
神経・筋肉系 緊張型頭痛、片頭痛、慢性疼痛、自律神経失調症など
その他 関節リウマチ、繊維筋痛症、更年期障害、慢性じんましん、
アトピー性皮膚炎、円形脱毛症など

思い当たるものがあれば、ご自身の状況を立ち止まってみてみるタイミングかもしれません。過労死も広い意味での心身症とされているので、過労死はストレス関連疾患の「最悪の転帰」と言われています。次回のテーマもストレスです。それがストレスになったら、ごめんなさい。

【参考文献】
1)丸山 総一郎編「ストレス学ハンドブック」2016 創元社 p5~101

( 谷 口 知 子 )